モノクロ写真
先日、とある撮影の立ち会いで、
以前よりお仕事をお願いしている写真スタジオに出かけました。
こちらは今年になってから転居された新しいスタジオで、いろいろと中を案内していただくうちに暗室があることがわかり、休憩時間はモノクロ写真についてお話を伺うことができました。
モノクロ写真は色彩がありません。
その情報の少なさから、非現実的な表現になり、見る人の想像力を掻き立てる効果があると私は思います。
東洋人のポートレートでは、黒い髪、黒い瞳の相性が良く、モノクロ写真ではより内面的な力が伝わるような雰囲気があります。
さまざまな魅力があるモノクロ写真。
人それぞれに好きな理由があると思います。
自らの手でモノクロプリントをする彼のこだわりは「トーンの表現性」でした。
モノクロのフィルムや印画紙は、トーンの再現が全てです。
この点だけに限るのであれば、カラーフィルムやデジタルカメラよりも優れた特性があるのではないでしょうか。
アナログな仕事
暗室を使った現像やプリントは学生時代に少しだけ経験したことがあります。
ジワジワと印画紙に姿を現すプリントの楽しさは、石膏デッサンにも似た特別なものがありました。
会社に入って使った暗室は、紙焼きのために用意されたトレス台です。
文字やマークなどを印画紙にプリントする作業で使います。
この会社は創業が古く、私が入社した時も版下をつかった入稿がまだ残っていました。
版下は関連会社にお願いして製作してもらうのですが、デザイナーが仕上がりに満足のいかない時など、自ら手作業で直していきます。
そんな時に暗室のトレス台を使って文字の拡大・縮小・複写を行います。
天候や気温、現像液のコンディションで仕上がりが異なるといった勘が要求される作業です。
版下の文字詰めは切り貼りしながらの作業になります。
手間と時間がかかる作業ですが、今できる事の最善を尽くしていました。
この仕事では余人に負けない!そんな気概をみんなに感じました。
それぞれがプライドをもって仕事をしていたと思います。
アナログな時代は効率が悪かったので、余計にそう思えたのかも知れません。
オートとマニュアル
子供の頃、家にあった一眼レフは絞り優先AE の針が上下するカメラ。
マニュアル機能の無いものでした。
だから露出補正ダイヤルをいつも使っていたように思います。
そのせいもあり、会社に入ってから買ったカメラはいろんな機能が入ったマルチモードAE の一眼です。
なれないプログラムモードを使うのですが、思うようには、なかなか撮れません。
測光モードもいくつかあって、中でもパターン測光が苦手でした。
これは5 分割の平均値を元に露出が決定されるので、状態が分かりにくく、後日、お店で仕上がったプリントは満足いかない物が多かったからです。
マルチモードのカメラなので状況に合わせた機能を使い分ければすむ話ですがこれでは被写体との対話より、カメラとの対話になりそうです。
その後、露光を示す針があるだけのシンプルなファインダーのマニュアル専用のカメラを中古で見つけて、
以来そちらを使っています。
思わぬ動きをする機械より、思い通りに動く機械を使った方が、結果に納得できるからです。
まとめ
デジタルカメラが登場して、データ入稿ができるようになって一番嬉しかったのは、仕上がりの確認がすぐできることでした。
昔の版下には色彩がありません。
写真は指定用のアタリ、色も赤ペンで指定するだけので、色校正が届くまで仕上がりは分かりませんでした。
モニターを使った仕事はレイアウト段階から仕上がりをイメージできます。
そういえば暗室でのプリントも、欲しい階調を確認しながらの作業になるので、なんとなく似ていると感じました。
暗室といった懐かしい言葉から、モノクロ写真に思いを馳せる一日でした。