今回は、ブランドの種類に触れてみたいと思います。
世の中には、「ライセンスブランド」や「地域ブランド」など、多様なブランドを表すワードが氾濫しています。
それによって、ブランドやブランディングの意味がわかりずらくなっている側面もあり、「ブランドの種類」と「関連ワード」を一旦整理してみました。
それでは、ブランドの基本的な5種類の区分からご紹介します。
ブランドと5種類の区分
①グループブランド
複数のブランドを持つ企業が、そのブランドを一括りにして一つのブランドとして位置づけ、顧客に認知されるようにするための戦略のことです。グループブランドを採用することで、複数のブランドを持つ企業が、そのブランド群を統一して強力なブランド価値を構築することができます。そのブランド認知はさまざまで、傘下の各企業より有名な場合もあれば、傘下企業の方が知られている場合もあり、それぞれ独立して認知されている場合もあります。
例:「トヨタグループ」(傘下にトヨタ自動車 etc…)、「三井グループ」(傘下に東京ドーム etc…)など。
②コーポレートブランド
企業全体のブランドイメージを表すものであり、企業が自社のビジネスや商品に関する印象を伝えるために使用するブランド戦略です。コーポレートブランドは、企業のミッション、ビジョン、バリュー、文化、歴史などを反映し、企業のロゴや名称、スローガン、広告キャンペーン、社員の行動や言動、社会貢献活動などがコーポレートブランドを形成する要素として挙げられます。コーポレートブランドは、企業の信頼性や認知度を高め、競合他社との差別化や顧客ロイヤルティの向上につながることが期待されます。
例:「アップル」、「ナイキ」、「本田技研工業」など。
③事業ブランド
企業内の事業単位がブランドとして認知され、製品・サービスにも展開しているブランドで、コーポレートブランドの下に位置します。強力な事業ブランドは、信頼感と専門性を示すことができるため、顧客獲得の際に大きな助けとなります。また、新しい市場や地域に進出する際にも役立ち、強力な事業ブランドを持つ企業は、世界的な規模でのビジネス拡大を促進することができます。
例:ソニーのスマートフォン事業「Xperia」、ゲーム事業「PlayStation」など。
④カテゴリー(ファミリー)ブランド
特定の商品カテゴリーに対してつけられたブランドのことです。この戦略は、企業が幅広い商品ラインナップを持っている場合に効果的で、ブランドを構築するための広告やプロモーションの費用を節約することができます。また、カテゴリーブランドの構築によって、顧客が商品を選ぶ際にブランドを認知しやすくなるため、競合他社との差別化には有効です。
例:花王の「ビオレ」(カテゴリーブランドの下に、洗顔料、メイク落とし、基礎ケアなどの個別商品を配列)
⑤プロダクトブランド
企業が販売する商品のブランド名を指します。商品自体の「独自価値」がブランドの認知を広げ、ブランドの「記号」が顧客の購入意思決定に影響を与えます。さらに、競合商品との差別化や優位性に重要な役割を果たします。
例:「味の素」というプロダクトブランドは、認知の高さから企業名にまで昇華。
いかがでしょうか? ブランドには種類とともに、そこに階層があることを感じていただけたでしょうか。
上記が一般的なブランドの種類で、企業はこれを階層としてとらえ、ターゲットや効果を考えながらブランド戦略を立てることが多いです。ですので、ブランドといえば、まずはこの5種類の階層からなると覚えることが良いでしょう。
これ以外にも、ブランド・ブランディングにまつわるワードは世の中にたくさんあります。
それらは、上記5区分に含まれるもの、そうでないものと様々で、しかも年々増えていく傾向のため、ここでは代表例のみをご紹介します。
ブランド関連ワード
【プライベートブランド】
小売業者などが自社ブランドで商品を販売することです。それらの中には「独自価値のある商品」もありますが、「低価格だけがウリのジェネリック品」も多く見受けられます。日本では量販店がメーカー品とそっくり商品を作り、プライベートブランドとうたうケースを良く見かけますが、そういったモノは、アメリカではプライベートレーベルと呼ばれています。ラベルを貼り替えたものという意味になり、ブランドという位置づけにはなっていません。
例:セブンイレブンの「セブンプレミアム」、イオングループの「トップバリュ」など。
【ナショナルブランド】
プライベートブランドの対義語で、メーカーが商品企画・製造から広告・プロモーション、全国的な販売を展開する、「誰もが知っている」高い知名度を持つ商標がナショナルブランドと呼ばれています。ただし、明確に定義がされているわけではなく、プライベートブランド(PB)、ナショナルブランド(NB)という区分は、日本の小売業界における業界ワードの一種。
【地域ブランド】
地域に由来するブランドで、国、地方自治体、地方組合、地元企業が運営母体になるケースが多い領域。観光資源にもなるため、観光産業とも密接に結びついています。ただし、「神戸牛」や「名古屋コーチン」など、ネームの認知は広がっていますが、識別のための『記号』であるロゴマークは認知が低いと言わざるを得ません。
例:「農林水産省GI認証」「神戸牛」など。
【ネーションブランド(国家ブランディング)】
国を一つのブランドとして捉え、その国のイメージや価値観を表現し、国内外での認知度や評価を高めることを目的として行われる活動です。ネーションブランドを確立するには、その国の歴史、文化、風土、人々のライフスタイルなどの要素を基に、国の独自性や魅力を表現し、国のイメージを高めることが重要です。観光や投資など様々な分野に影響を与えるため、各国では政府や企業などが国家ブランディングに積極的に取り組んでいます。
スイスのブランド要素例:「アルプス山脈」、「高級時計」、「チョコレート」など。
日本のブランド要素例:「伝統的な文化や技術」、「食文化」、「近未来的なテクノロジー」など。
【パーソナルブランド】
個人が持つブランドイメージで、スポーツ選手や芸能人などが該当します。
例:「テイラー・スウィフト」、「リオネル・メッシ」、「大谷翔平」など。
【ライセンスブランド】
他のブランド価値に対してロイヤリティ料を支払って、製造・販売をするビジネスモデルで、一般にはライセンスビジネスと呼ばれています。
他のパーソナルブランドを使用した例:ナイキの「エアジョーダン」、アディダスの「スタンスミス」など。
【フランチャイズブランド】
既存のブランド価値を使用して、独立した事業者が店舗を開業すること。加盟店は、フランチャイズ本部から提供されるサポートやノウハウを活用することで、独立開業するよりもリスクを抑えながら事業を展開することができます。
例:「マクドナルド」、「サブウェイ」、「ピザハット」など。
【ブランディングイベント】
企業や商品などのブランドイメージを向上させるために開催されるイベントのことです。このイベントでは、ブランドの価値や魅力を訴求するための展示やプレゼンテーション、コンサートやトークショー、体験型のブースなどが用意されることがあります。
例:ファッションブランドが開催するファッションショー、IT企業が開催するカンファレンスなど。
【リクルートブランディング】
コーポレートブランディングの中に含まれる、優秀な人材を採用しやすくするためのマーケティング戦略の一つです。具体的には、企業の魅力的な特徴や価値観を明確にし、それを社員や求職者などに伝え、自社ブランドを強化することを目的としています。
施策例:企業のミッション、ビジョン、バリューの明確化、社員の声の発信、福利厚生の充実など。
【インナーブランディング】
コーポレートブランディングの中に含まれる、従業員に対して企業の理念やビジョン、価値観を共有し、理解を深め、共感や愛着心を持って行動してもらうための活動です。従業員が自社やブランドへ愛着を持つことは、企業への満足度やモチベーションを高め、離職率の低下・ブランドのイメージアップ・優秀な人材の確保・生産性の向上などにつながります。
施策例:社員教育、コミュニケーション活動、人事評価制度、トレーニング実施、イベント実施など。
まとめ
いかがだったでしょうか?
市場競争力を強化するために、さまざまな分野においてブランドが構築され、さまざまな手法によってブランディング活動がされていることを感じていただけたでしょうか。
これからも時代や市場動向、顧客ニーズの変化によって、新しいブランドやブランディングの形が生まれていくことと思います。
次回は、「ブランド資産」について触れたいと思います。それではまたの機会に。