こんにちは。これまで「ブランドの定義」と「ブランドの歴史と変遷」、「ブランドの種類」について、2回に渡ってお話してきました。
今回は、これまでも少しは触れた「ブランド資産」について整理し、このシリーズを完結したいと思います。
ブランド資産とは
「ブランド資産(ブランド エイクエティ)」とは、ブランドが持つ無形の価値を、企業の競争力や市場価値、収益性に影響を与える重要な資産としてとらえ、投資対象とする考え方です。
それは、「ブランドの知名度やイメージ」、「信頼性」、「顧客ロイヤルティ」など、ブランドに関連するさまざまな要素から構成されます。
この考え方を提唱したのは、カリフォルニア大学バークレー校のデービッド・A・アーカー教授です。
彼は「ブランド エイクエティ ピラミッド」というモデルを用いて、消費者がブランドを感じるのしくみを説明しています。
そして、ブランド資産を高めるためには、ブランドの5つの構成要素である「ブランド認知」、「ブランド連想」、「知覚品質」、「ブランドロイヤルティ」、「その他のブランド資産」を育成する必要があると述べています。
ブランド認知とは
ブランド認知とは、そのブランドが「どれだけ知られているか」、または「どのように知られているか」ということを測定した結果を指します。
ブランド認知の測定には、「純粋想起」と「助成想起」の2つの指標があります。
「純粋想起」とは、手がかりがあればブランド名や製品を思い出すことができることで、「絆創膏」といえば「バンドエイド」が想起されるのがその例で、これは購入につながりやすい強い指標です。
「助成想起」とは、ブランド名やロゴを提示されたときに、ブランドを想起することで、「スウォッシュ」を見れば「ナイキ」とわかることなどがその例で、これは差別化や愛着につながる指標です。
いずれにせよ、これらを高めるには、ターゲット層に合わせた効果的な情報発信や、定期的な効果測定と改善を行うことが必要です。
また、これらの測定方法には、「WEBサイトのクリック率や訪問率などのデジタル指標」や、「アンケート調査」などの直接的な方法があります。
アンケート調査では、「自発的想起」や「補助的想起」などの質問を用いて、消費者のブランド認知度や理解度を測ることができます。
ブランド連想とは
ブランド連想とは、消費者があるブランドに対して思い浮かべるイメージや印象のことです。
例えば「アップル」と聞いて、「スマートフォンやパソコン」などの製品や、「シンプルで洗練されたデザイン」などを連想するとしたら、それがブランド連想です。
または「スターバックスコーヒー」を思い浮かべた時に、「おいしい」、「一緒にチョコレートケーキが売られている」、「スタッフの服装」が連想されることなども指します。
これが強ければ強いほど、顧客はそのブランドに対して関心を持っているといえ、ブランドの知名度や好感度、差別化などに影響を与える重要な要素です。
ブランド連想を高めるためには、「一貫性や独自性のあるブランディング」が必要です。
また、消費者にとって魅力的でメリットのある情報を提供し、定期的に効果測定と改善を行うことも大切です。
知覚品質とは
知覚品質とは、消費者が製品やサービスに対して認識する品質のことで、機能や性能だけでなく、信頼性や雰囲気などの価値も含まれます。
消費者は商品・サービスに接するとき、その商品の品質がどのようなものであるか、どの程度のものであるかを、意識的にしろ無意識的にしろ考えます。
例えば、「このA社の商品は出来が良い」、「B社は昔事故を起こしたから、この商品も悪い(あるいは悪いに違いない)」と考えます。
これは、ブランドの競争力や市場価値、収益性に影響を与える重要な要素で、知覚品質を高めるためには、商品やサービスの質を顧客に信頼してもらうことが必要です。
そのためには、「品質を証明する方法」や「ストーリーを見せる方法」などがあります。
ブランドロイヤルティとは
「ブランドロイヤルティ」とは、消費者がある特定のブランドを購入したいという気持ちを表すもので、「愛着」や「忠誠心」とも言えます。
これが高まれば、当然その商品を継続して購入する確率は高くなり、企業は安定した売り上げを確保することができます。
現在、ブランドロイヤルティを高めるための施策としては、「顧客の意見や感想を正確に把握すること」、「ニーズに合った商品やサービスを提供すること」、「SNSなどを活用した情報発信を続けること」、「ポイントプログラムなどインセンティブを提供すること」などが行われています。
その他のブランド資産とは
「その他のブランド資産」とは、上記4要素以外の無形資産全般を指します。
例えば、「顧客データ」や「特許権」、「商標権」や「著作権」、「ノウハウ」や「人材」などがそれにあたります。
「顧客データ」は、顧客がどのような商品やサービスを購入しているか、どのような嗜好を持っているかなど、顧客に関する情報を指します。
「特許権」は、発明や製品などに対する独占的な権利を、「商標権」は、商品やサービスに対する商標の使用権を、「著作権」は、著作物に対する著作者の独占的な権利を指します。
「ノウハウ」は、企業が持つ技術やノウハウを、「人材」は、企業が持つ人材資源を指します。
「その他のブランド資産」が指す範囲は、顧客情報から知的財産や人材までと幅が広く、日常の挨拶から社会貢献活動まで含むという見方もあります。
企業にとっては、「マーケティング」のみならず、多くは「マネジメント」に関わる要素です。
まとめ
この「ブランド資産」という考え方は、業界に大きな革新をもたらしました。
それまで、体系化されていなかった「ブランド」という言葉が、「ブランド資産」と考えられるようになったことで、ブランドは育てていく必要があるものと認識されるようになったのです。
そして、そのためには「投資」も必要と判断されるようになりました。
この影響から1990年代以降、世界中でブランディングが活発になり現在にいたります。
3回にわたり、ブランド・ブランディングについてお話しましたが、いかがだったでしょうか?
ブランディングとは、時代とともに変化する「価値観」に常にアンテナを張って、「モノ・サービス・組織の価値を育て続ける活動」と感じていただけたでしょうか?
個人的には、「定期的に手入れや肥料が必要だけど、きちんと世話すれば美味しい果実が実り続ける農園」のようなイメージを、ブランディングに対して抱いています。
ここまでお話させていただいたように、ブランディングを成功させるためには、「マーケティング」や「マネジメント」の視点から計画立案することが重要です。
私たちは、こうした考え方を踏まえ、「ブランディング計画立案」のお手伝いと、計画に最適化した「デザイン」をご提供したいと考えています。