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デザイン

2024.8.26

変わりゆくデザイン



創業が古い企業のロゴや、ロングセラー商品のパッケージなどは時とともに変化していきます。
消費者のニーズや、その時代の流行が反映されていて参考になることが多く、
書物やホームページなどをよく見ます。



魅力的なパッケージデザイン

商品のブランディングを考える上でもパッケージデザインは重要です。趣味性が強い商品であればその重要性は高まります。タバコなどの嗜好品はロゴやパッケージの影響が強いと言えるでしょう。
学生時代にデザインの授業で学んだピースのデザインは印象的でした。鳩がオリーブの葉をくわえているデザインの詳細図が細密で、紙面に対して目がどの割合に位置するなどを効果的に計算されていていました。
このデザインはアメリカの商業デザイナー、レイモンド・ローウィによるもので、当時としては破格のデザイン料が発生したことや、パッケージが変わってから売上が3倍になった事など、戦後の日本にデザインの重要性を示した一つとなっていて、タバコのパッケージの中でも特に魅力的です。



他に、タバコのデザインで好きな物は、同じ小箱のホープライトです。これは内箱を開くと弓を射る人のイラストが印刷されていました。
狩人や騎士、武士などのキャラクターのどれかが印刷されています。それぞれ弓を射るポーズもまちまちになっていて何が出るのか分からないのですが、一つのキャラクターが揃うとパラパラ漫画ができるといった遊び心が隠されていました。



昭和のタバコ事情

ちょっと一息つく、ここで一服などの休憩を表す言葉も、喫煙者からすればタバコを吸うということです。若い人は知らないかも知れませんが、昭和の時代はもっと自由に、普通にタバコが吸えました。
小学生の頃に職員室に行けば、タバコの煙で向こうが霞んで見えましたし、電車に乗ればJNR のかっこいいロゴが刻印された灰皿が座席の近くにありましたし、街中に公共の灰皿がありました。名古屋で見たゴミ箱は上に灰皿が設置された優れものでした。
普通にタバコのコマーシャルも流れていたし、映画やドラマではタバコを吸う大人が格好良く写っていました。(子ども番組でもウルトラセブンのメトロン星人が登場する回など、タバコが重要な役割を担っていました。)
そんな時代と今では喫煙への意識が大きく変化しています。かつての大人の嗜みは、健康被害の象徴に変わりました。肺がんや肺気腫などの深刻な病気や、副流煙による健康への被害が叫ばれるようになり、世界的に人々の意識も変わってきました。



財務省令改正に伴うたばこ製品パッケージデザインの変更
現在のタバコのパッケージには、たばこ事業法及び財務省令により「注意文言」等を表示することが義務付けられています。
パッケージに注意喚起を行うことは、我が国特有のものではなく世界的な取り組みで、世界保健機関枠組条約(FCTC) 第11条に基づく物だそうです。国によってはショッキングな画像をパッケージに使用したり、1本1本に注意喚起のメッセージが印刷されている国もあるようです。

これはタバコによる健康への影響を認知させ、タバコの使用量を減らすことを目的にしています。効果は一定量あるようですが、喫煙者がタバコをやめる理由の多くは、値上げや吸える環境の減少・変化も大きく影響すると思います。
本来は商品販売の売上向上に貢献してきたタバコのパッケージデザインでしたが、人々の喫煙に対する意識の変化もあって、現在では求められる役割が変わってきました。



愛されるデザイン

先にあげたピースのデザインも、たばこ事業法により「注意文言」が印刷されています。あれだけ厳密に計算された配列が崩れてしまい、当初あった空気感が損なわれてしまいました。
芸術・アートであれば台無しなのかも知れませんが、デザインとアートは違います。デザインはその都度の条件に合わせ、最適を構築する行為だと思っています。
今あるタバコのパッケージは新たな役割を十分に目的を果たしていて、なおかつ消費者的にはうれしい初期の絵柄・雰囲気を残してくれています。ピースやホープ、わかばやエコーなどの銘柄は無くならず、今でも購入が可能です。
もちろん製品に力があってこそですが、長く愛される銘柄には優れたブランディングの力が大きいと思います。